00 「神」の記憶

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他人の家なのに失礼だが、狭い部屋に小さな正方形のテーブル。 およそパーティーに似つかわしくない雰囲気だ。 ここで前にも一度パーティーをやったことがある。 「ほら、飯だけは豪勢にしてやるから、たっぷり楽しんでいきな」 奈津紀が次々と料理を運んでくる。 確かに料理は絶品。 そして、今日は珍しい人物が一人。 「母ちゃん、もっと強い酒くれよ」 「バカ言うんじゃないよ晴天。アンタ成人になったばっかだし、酒弱いんじゃなかったか?」 「んなことねぇよ。今日はパーティーだろ? 盛り上がっていこうぜ!」 快晴の兄貴だ。 上京したのはいいが、仕事が見つからず四苦八苦しているらしい。 パーティーのことを聞きつけて、今日だけ帰ってきたという。 「アンタは邪魔だよ。快晴の友達とパーティーやってんだから」 「いいじゃねえかよ! オレだってやりてえよパーティー」 笑っていた。 いつの間にかそれを眺めていた私達も笑みがこぼれた。 「奈津紀さんや、わしにも料理くれんかの?」 終いには快晴のじいさんまで乱入して、何だかんだで盛り上がった。 数日が過ぎた頃。 「……違う」 私は部屋でベッドに横になり、ボソッと呟いた。
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