3 家族

7/10
前へ
/240ページ
次へ
涙が溢れてきた。心細い。 今までこんなに長い時間両親と離れたことはなかった。 こんなことなら一緒について行けば良かった。 お腹が空いてきた。いつも夕食は七時までには済ませていた。 涙を堪えると、急に静寂が襲い掛かるように訪れた。 時計の音が次第に大きくなっていく。 途端に怖くなってテレビを付けた。ニュース番組だった。 『…午後四時、××地区で事故が発生しました。被害者は、三十代の女性三名。原因は、ビルの工事現場のすぐ近くを歩いていたところ、上空から重量の機材が落下してきたものと思われます。被害者三名の死亡は既に確認されており…』 違う。そんなハズはない。その三人の中に母はいない。いるハズがない。 だって… 『続いてのニュースです。午後六時頃、××地区で交通事故が発生しました。死亡者は車の運転手の三十代の男性一名。交差点で曲がりきれず、対向車と衝突したものと思われます。現在…』 不安が一気に押し寄せてきた。 まだ両親と決まったワケじゃない。お母さんとお父さんじゃない。 だって、明日は遊園地に行く約束じゃないか。 私はただただ涙を流していた。 たとえ両親に何かあったとしても、何をしていいか、何をすればいいかわからなかった。
/240ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加