1 遭遇

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「神」。 「神」は産み落とす。新たな生命を、空から地上に。 そして「神」は世界を、人間を見下ろす。 見守るように、ではない。まるで檻の中の生き物を監視するように。 古い書物の一節にある「神」の定義。 「神」は全ての人間を監視している。 「神」は道理を外れた人間に天罰を下す。 「神」はそれ故に絶対的な力を持つ。 「神」を冒涜した者、「神」に仇なった者の末路。それは容易に想像出来る。 「神」はこの世界を空から束ねている。 「神」は絶対の存在。 ……… 校長の挨拶やら何やらで、長ったらしい入学式が終わり、再び教室の中。 相変わらず微妙な空気が混じり合う教室の中で、大花はやはり一人の男子を見つめていた。 さっき心に思ったことを決め付けるのは早い。何故なら、まだ名前もわからない。 自ら率先して事情を聞き出しても良かったのだが、大花は自分から動くタイプではない(自覚している)。 どうせこの後担任教師が来て、自己紹介でも何でもやらせるだろう。入学初日の定番だ。 大花はじっと機会を待つことにした。 「ねえ」 突然背後から左肩を掴まれた。思わず体がビクッと反応してしまう。 振り返ると一人の女子が立っていた。
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