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「……な、何?」
大花は動揺でそんなことを弱々しく言うことしか出来なかった。
「さっきからボーっとしてるよね。動かないの?」
自分のとは対極に位置する、サラサラの長い黒髪。
眼鏡の奥の瞳が大花の瞳を覗き込む。
「…何で動く必要があるの…?」
「えっ!? あ…いや、みんな他の女子と話そうと動いてるんだよ、友達を作ろうとして。動かないの?」
彼女は少し威圧されたように声を落とす。そしてまたさっきと同じ質問が返ってきた。
「…慣れてないんだ、昔からそういうの」
大花はどこか切なげに呟いた。
彼女は少し間を置いて考え始めた。先程より少し表情が和らぐ。
「じゃあ、私があなたの友達第一号。いいでしょ?」
笑顔で右手を差し伸べる。
大花はしばらくその手を見つめた。
「……友達…」
「そう、友達。…ダメ?」
少しバツが悪そうに彼女は首を傾げる。
「……」
大花は無言でその手を取った。
「よろしく! 私、木下麻美(あさみ)。あなたは?」
「……神永、大花」
一瞬、自分の嫌いな名前を言うのに抵抗が生まれた。
彼女は、麻美は「大花か」と笑顔で呟いている。
麻美は大花の真後ろの席だった。さっきの会話は自然の流れというヤツだったのかも知れない。
その時、突然ガララッと教室の扉が開かれた。
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