1 遭遇

6/10
前へ
/240ページ
次へ
……いない? そんなバカな。まさか、もう帰ってしまったのだろうか。早すぎる気がするが… …いや、やっぱり夢だったのか…? 無理矢理にでも自分を納得させようとする。でも、どう試行錯誤してもスッキリとしなかった。 とりあえず、帰るため廊下に出ることにする。 「やっ! 大花!」 ビクッと左に一歩身を引く。右を見ると麻美が待ち構えていた。 「何だ…麻美か」 「あはは! 今のビビリ方サイコー!!」 私の反応がウケたようだ。麻美は周りを一切構わず大笑いする。 「…じ、じゃあ」 大花はほんの少し顔を赤らめて、その場からそそくさと立ち去ろうとする。 「あ、待ってよ! せっかく待っててあげたんだから一緒に帰ろ?」 麻美の手が大花の肩をがっちり掴む。 「頼んでない! それに、帰り道違うかも知れないだろ」 大花は少し乱暴に手を振り払った。いささか神田良太のことで荒れているようだ。 「えっ? あ…そっか。私、校門右に出て五分くらいだけど…大花は?」 「……右に出て十分」 麻美の予想外の答えに、大花はバツの悪そうな顔で答えた。 「やっぱ同じじゃん。それとも用でもあるの?」 「…あ、うん…」 曖昧に頷いた。
/240ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加