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カァチャン
俺のカァチャン、サエコはヤバイ。
ヤバイくらいいい女だ。
多少、息子の欲目はあるとしても、黒く艶やかな髪や、華奢な、でもきちんと女らしさの残る体つきや、左右の大きさの違う目なんかは、充分いい女に値すると思う。
守ってあげたくなる雰囲気だって、持ち合わせていると思う。
だけども、カァチャンはいつだって逞しさを装おう。
何があっても、平気な風に。
カァチャンは、20歳で一度目の結婚をして、21歳で俺のネェチャンになった楓を産んで、23歳で離婚して、それから30歳で俺を産むまで、一人でバリバリ働いて、嫌なことがあったって、ガンガン呑んでは笑い飛ばしてきたんだから、それも当然といえば当然なんだろうけど。
「カァチャンはね、強いんじゃなくて、強くなったんだよ。強くならなければ、生きていかれなかったんだもの」
俺がまだカアチャンのお腹にいた頃、カアチャンは、俺と、それから自分自身に言い聞かせるように呟いてた。
その言葉を聞いてから、俺はいつだって思っている。
“カァチャンは、やっぱりか弱い女なんだ。俺とトゥチャンで、しっかり守ってあげなくちゃ”ってね。
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