-君ニ狂ウ-

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「兎輪は他人をちゃんと大切にするんだね。 俺だって無闇に人を傷つけないよ」 兎輪の細い髪を撫で、背中から抱きしめる。 無言で王に流される兎輪の表情は蒼白としていた。 未だに小刻みな呼吸。 背後から心臓を掴まれている気分だった。 「だって……王、ナイフ持って行くから……私みたいにっ!!」 「ごめんって、何度も謝ってるだろ? 兎輪に一回『これ』を向けたからって、そんな怖がるな! 俺を……否定してるみたいで、嫌いなんだ」 兎輪の胸倉を掴み、声を荒げる王。 普段ならこんな事はない。 以前の“軟禁事件”でもこのように声を荒げる事はなかった。 しかし、この状況に陥っても王を拒絶することはできなかった。 「ち……がう。王が誰かを傷つけるのが、怖く…て。 王を……否定…してるんじゃない」 震える体から出される声は、途切れながらだされた。 首を横に振る兎輪を抱きしめ、背中をさする。 子供をあやすような手つきに先程までの姿はなかった。 「知ってた……兎輪は俺を拒めない。 兎輪は俺を愛してる。怒鳴って悪かった……」 「……」 いつ自分が愛してると言ったのか。 自問してみるが答えは見つからない。 「あぁ、あとさっきのは宅急便だよ。 兎輪が退屈しないようにと思って、ネットで借りたんだ。 欲しい物はなんでも手に入るよ」 「……そう」 緊張が解け、兎輪は肩の力を抜く。 学校に来ないのを心配した遥香が、兎輪が王の家に居ることを考えてここに来たのではないかと思ったのだ。 「なに安心してるの?」 「……っ!!」 王の言葉の後に生温かい感触が唇に押し当てられる。 この感触を兎輪は知っていた。 「兎輪は俺の事を考えて。 兎輪が他人の事考えるから、嫉妬する」 一瞬離れた唇は再び引き寄せられ、視界を覆う。 キスを重ねる時、王の目は開かれている。 私は一時も、貴方の瞳から逃れられない キスを重ねる瞬間も、眠る時も。 「……王しか、いない」 「あぁ、兎輪の瞳には俺しか映ってない」 頬を紅潮させ、兎輪の唇を撫でる。 彼の言葉は煙のように彼女に染みていた。 、
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