-君ニ狂ウ-

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あぁ。そっか。 お風呂に入って、私に“死なれたら”困るんだ。 肩に触れる手が微かに震えている事から、その事に兎輪が気づくのは容易だった。 風呂場となれば溺死の危険もあるし、手首さえ噛み切れれば出血死だって容易く出来る。 彼女の危険は避けなければならない。 彼にとって最重要事項。 「……大丈夫」 大丈夫。自分に言った言葉なのか、王に対して言ったのかはわからなかった。 -*- 王は確かに一緒には入らないが、風呂場の扉を背もたれにして座っていた。 「兎輪、大丈夫? 必要な物があるなら言うんだよ」 間近に聴こえる声をかきけすようにシャワーのノズルを捻る。 「……っ」 自然と堪えていた涙が溢れ、無数に落ちる水滴に交じる。 感情を出来るだけ抑え、泣くことを我慢していたのだ。 (こんな異常に耐えられるわけがない!) 「…に…げ、たい……っ」 口をを手で押さえ、漏れる嗚咽が聴こえないようにする。 (……でも、あんな状態の王を突き放したら) 逃れたいという思いとは反対に、王に情の移る自分に嫌気がさしていた。 矛盾した考えと、思いはさらに兎輪を悩ませ苦しめる。 楽になれる方法はない。 かといっても楽に慣れることもない。 “兎”は追い詰められる。 、
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