-堕-

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-*- (――王がとても愛しい……) 愛情、恋情、悪感情、哀情。 定かではない思いが胸を馳せていた。 近くて遠い、存在。 泣き疲れお互いの緊張が解けたのもあり、いつの間にか抱き合ったまま寝てしまっていた。 先に目覚めた兎輪は王の腕を退かそうとしたが、王の腕はさらに兎輪を抱きしめる。 諦めてそのままの体制で居ようと思った時、王のポケットに違和感を感じソレを取り出す。 久しぶりに対面した自分の携帯電話だった。 癖のように携帯を開けると、三桁単位の着信とメールがあった。 主に着信は狩野でメールは遥香だった。 (謝らなきゃ……。 私の為に心配してくれたんだから。 王の事も言わなきゃ、二人とも勘違いして強行突破してきそう) 口許を緩ませ、二人にメールで返事を返す。 内容は自分が無事な事と、王を肯定する言葉だ。 「……ありがとう、遥香も狩野も」 あとは送信ボタンを押すだけだった。 「兎輪何してるの?」 体を引き寄せられ、下腹部から抱き締められる。 両腕に込められた力は苦しいものに変わりはなかったが、不安はなかった。 首を横に振ってやましいことはしてないと伝える。 水を飲んでも、寝ても王を前にすると声を出せずにいた。 一旦、メールを中断して文を打ち込む。 声が出ればすぐに伝わるものだが、今は携帯でしか意思を伝えるものがなかった。 王は黙って兎輪の髪を撫でながら、指先を見つめる。 『おはよう 携帯が王のポケットに入ってたから見た ごめんなさい それいがいは何もしてない』 焦ってひらがなだらけの言葉になったが、王に見せる。 王はそれを目で追った後に、兎輪の額にキスを落として微笑んだ。 「大丈夫だよ。 怒らない。その携帯は兎輪のなんだから兎輪の自由にしな。 ……でも」 兎輪の手からするりと抜けた携帯。 それは王の手に収まった瞬間に パキリ、と悲鳴をあげた。 、
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