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「待て」
その男が間に入って青華を遮った。
「な、なんで!?」
「はぁ、黙って見てろ」
青華を片手で制するともう一方の手を流羅に向けた。
「"――――"」
「!!!?」
限りなく小さな声で男が呟いた瞬間驚くことが起きた。
地面に染み込んでいた血液が浮き上がって傷口の中に戻り始め、傷も何もなかったかのように塞がったのだ。
治癒能力なら今まで何度か見て来た。
しかし、今のは治癒とは全く別物に見えた……まるで時間自体を巻き戻しているようだった。
「もう大丈夫だ
お前はここにいろ」
そういう男を見て青華の頭の中には一つの名前が浮かんでいた。
世界最高Zランク保持者―黒修羅―
∽
「ふぅ、バレてねぇな」
いつバレるか心臓バクバクしていた剣は、青華と流羅がいた場所から少し離れた場所で安心したように呟いた。
「じゃあ、さっさと終わらすか
来い、<黒滅鱗-コクメツリン->」
剣の右手が輝いたと思ったら、その手には2mはある漆黒の大刀が握られていた。
「よぉ、久しぶりだな黒滅鱗」
「ハイ、マスター
キョウ ハ ケイタイヘンカ ヲ シヨウ シマスカ ?」
異能器特有の機械的な声が聞こえてくる。
「あぁ、頼む
今日はLevel:1でよさそうだ
一発で行くぞ~」
「ハイ、マスター
ケイタイヘンカ Level:1」
メキメキ…と奇妙な音をたて、刀身が黒い鱗に覆われた。
「射ぬけ…<無限滅鱗-ムゲンメツリン->」
刀の切っ先を人魚を追い詰めている異形者の大群に向けて言い放った。
その瞬間、刀を覆っていた鱗が剥がれ、物凄い速さで異形者の元へ突き進んでいく。
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