6073人が本棚に入れています
本棚に追加
/436ページ
初夏。
少し蒸し暑い雲のない夜。
そんな夜空の下のとある家の中。
坂本 ゆかりは学校の課題を、真剣な面持ちで進めていた。むむむ、と口元にシャープペンシルを当てて唸っている。
綺麗に整頓された家具類と室内に漂う柔らかな香りが、彼女の性格を表していた。
健康的な綺麗な肌に、肩まで伸ばした髪、細い手足、パッチリとした目、桜色の頬と、まだ幼い印象は残るものの愛らしい容姿の女の子だった。
「ん、終わり~」
ふぅ、と小さく息をつき、勉強道具を片付けていく。
その途中、脇にあるベッドの上の携帯電話が軽快なメロディーを鳴らした。
「メール?」
点滅する携帯電話を手に取り、カチカチと操作する。
画面には親友からの遊びの誘いのメールが映し出されていた。
「ん、"いいよー"……と」
明日は日曜日。特にやる事も無かったゆかりは、すんなりと快諾した。
一時に駅前に集合、という約束を結び携帯電話を閉じると、軽く背伸びをし、ベッドに寝転がった。
最初のコメントを投稿しよう!