第一話:不遇の少年

3/62
前へ
/643ページ
次へ
「見えないものを信じるってのは性に合わないんだよ。見て聞いて触れることが出来れば信じてやる」 席を立って鞄を手に取る悠を見て、恵那も慌てて立ち上がった。 「ちょ、クロス!?あんた今日は暇なんじゃないの!?」 「バイトの時間が近付いてたりすんだよ。あっ、今日は冷えるから腹出して寝るなよ。それと明日は雨だから傘持って来い」 「なッ!?ね、寝ないわよバカ!!」 真っ赤になって怒る恵那を眺めつつ、悠は笑いながら教室から逃げるようにして去って行った。 「明日は雨か……」 今日は十二月二十三日……クリスマスイブは、天気予報では雨だ。 「イブ……晴れるかな」 恵那は心の中で、晴れることを望んでいた。
/643ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4329人が本棚に入れています
本棚に追加