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「悠月朔夜。」 呼ばれてあたしは振り向いた。 するとそこには立海で最も女グセの悪い男、仁王雅治が立っていた。 「俺と付き合わんか?」 ニヤリと笑みを浮かべて。 あたしはこの男が嫌い。 この男と居ると変になる。 「どうじゃ?」 この男の声も嫌い。 胸を掻き乱される。 「…遊び、でしょ?」 嫌いで嫌いで嫌いで、 でも好き。 「…遊びじゃなかよ。」 ふと真顔に戻り、近づいてくる。 壁に追い詰められ、動きがとれない。 顔が近づいたかと思うと、唇に柔らかい感触。 仁王のそれは、あつい。 「本気でお前さんの事好いとるんよ?」 「―――――っ……」 目が、本気だった。 仁王にとってあたしを騙すくらいどうって事ないんだろう。 で も 騙されてやってもいいかもしれない。 ――――詐欺師は悠然と微笑む。
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