鉈は持っていません

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新学期の朝。 重い瞼を開くと、朝早々違和感を感じた。 ……何でだろう? 両腕が動かない。 さらには……痺れている。 顔を傾けると、右側には妹、反対側には姉が寝息をたてている。 そう、毎朝この姉妹は夜な夜な俺のベッドに潜り込んでは寝ている。 何時に入ってくるかは定かではない。 だって俺は寝てるから。 さすがに朝食の準備をしなければならないので、静かに腕を引っ込めベッドから這い出た。 顔を洗って台所へ行き、冷蔵庫から卵を取った。 目玉焼きにでもしようかな。 なかなか良い感じに焼き上がり、匂いを感知したのか階段の辺りから二つの足音が聞こえてきた。 「ふわ……徹ちゃんおはよ~……」 眠そうに目を擦りながら欠伸混じりに挨拶したのが、姉の矢吹 鈴(やぶきすず)。 漢字で表せと言われたら、変態の二文字が真っ先に浮かぶ女No.1(俺調べ)だ。
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