鉈は持っていません

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「きゃっ!」 「だっ!」 俺もぶつかった人もその場に尻餅をついてしまった。 俺はすぐさま立ち上がり、ズボンについた埃を払った。 「ごめん、大丈夫か?」 するとその人は静かに顔を上げた。 今更気づいたが、その人は女子だった。 凛とした顔立ち、目はぱっちりとしていて、見るからにサラサラの長い黒髪、体は少しばかり華奢だ。 俺と同じ、桜崎高校の制服を身に纏っている。 見事に真っ白な布が見えた。 「あ……ごめんなさい、あなたこそ大丈夫ですか?怪我とかしていませんか?」 彼女は布が見えた事に気づいておらず、すっと立ち上がった。 良く見ると、結構……いや、かなり可愛い……。 「いや、大丈夫だよ。本当にごめん、急いでたから……」 「いえ、謝るのはこちらの方です。本当にごめんなさい」 彼女は深く頭を下げた。 俺にも非があるのに、かなり礼儀正しいというか……俺が謝れよ。
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