14人が本棚に入れています
本棚に追加
また父の怒鳴り声が聞こえた。
恐かった…
荷物をまとめる母の姿を見て見ぬふりをした。
弟に見せまいと、わざとちゃらけて笑わせる。
「早く出て行けっ!!」
父がテーブルをまた叩き怒鳴った。
ビクッとし弟と目が会う。
不安そうな顔をしてる弟の顔を見て、私も不安を隠せずにいる。
「お母さん。どうしたん?どっか行くん?」
何があっても、私達の前ではいつも明るく笑って涙を見せない母が必死に泣くのをこらえてる。
嫌だ…
私は、母を外に出しちゃダメだと玄関の前に立ち塞がった。
「何で行くん?何処に行くん?お母さん!行ったら嫌や!」「お母さんどっか行くん?お姉ちゃん…。」
弟と二人母の体を押し、部屋に戻そうとした。
泣きながら必死に母の体を押さえても、9才と7才の力はしれている。
「おまえらどけっ!はよそんな女追い出せ!!」
父の怒鳴り声の後、母が弱々しい声で言った。
「ごめんね…。」
そう一言だけ言い残し出て言った。
部屋の窓から、背を丸め小さくなりながら駅へと歩く母の背中は今でも忘れない。
この日を境に笑顔を無くした。
最初のコメントを投稿しよう!