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いつものホテルに着いた。
他のラブホに比べて値段が高い。
伊原に一度言った事がある「もったいないよ?寝るだけなのに。」
すると伊原はニッコリと、子供の様な笑顔で
「寝るだけやから贅沢せなあかんねん。」
と大きな手でワタシの頭を撫でてくれた。
それからも伊原は、ワタシを呼ぶ時は必ずこのホテルを使った。
すっかり顔馴染みになった受付の女性が、ワタシに軽く会釈する。
このホテルは、ワタシの様な女を呼ぶ為に使うには相応しく無い。
大抵の客は、休憩料金3000円位のホテルにワタシを呼ぶ。
ワタシもそれで当然だと思う。けして安く無い金額をワタシに使うのだから。
ワタシの客では、伊原だけが、このホテルを使った。
ワタシは、このホテルが好きだ。
料金に見合う内装と、スタッフの気配りを感じる。
まるで自分の部屋の様な錯覚に落ちてしまう。
エレベーターで伊原の部屋へ向かう。
ドアをノックすると、伊原の声が返って来た。
「オゥ。」
「今晩は。伊原さん。」
ワタシはソファーに寝そべった伊原に心からの笑顔を向けた。
「お疲れさん。」
伊原はテレビを視たままワタシに声をかけた。
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