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見渡す限り木々が生い茂る森の中に一戸、ぽつんと小さな社がたたずむ。屋根はぼろぼろで、所々に虫食いのような穴が空いていた。
中は2、30人くらいが身を寄せて座るほどの広さしかない。
その古びた社の中で、希美は横向きに倒れていた。気を失っている様子である。
そして出入り口であるらしい戸から見て一番奥の場所には、希美が美術準備室で発見した鏡と同じものが飾られていた。
しばらくして希美が意識をとりもどす。
「んー……?」
辺りを見回すが、屋根に空いた穴から差し込む光はあまりに微量で薄暗い。しばらく呆然としていた。
(あれ?いつの間にか寝ちゃったのかな。確か美術室に入っていったはずだけど)
微かに残る記憶を頼りに考えを巡らせる。少し時間がたって、美術準備室に入って謎の鏡を見つけたことまで思い出した。
「そうよ!鏡だわ。あれを見てからの記憶がないもの」
後ろを振り返ると、少し離れたところにその鏡があった。
それを見つけて思わず安堵のため息を漏らしたが、その安心感はほんの一瞬である。
希美は気がついた。
自分が手をついた床は木で出来ていて、ここは美術室とはまったく異なる場所であるということを。
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