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「ここ、どこ……?」
口にするも、答える者は誰もいない。
希美はとっさにポケットにしまった携帯を取り出す。
(ここがどこかは分からないけど、とにかくお母さんに電話すればなんとかなるかもしれない!)
けれど、その希望はあっさりと打ち砕かれた。
「そんな……圏外だなんて」
希美は携帯を持つ手を力無く落とした。部屋にはゴトンという音が響くだけである。
でもいつまでも座っている訳にもいかないが、しばらくは動ける状態では無さそうだ。
気分が落ち着いてから辺りを見回してみる。
周りには鏡以外にはなにもなく、殺風景だ。
ふと鏡が飾ってあるのと反対の方に顔を向ける。そっちの方は部屋の中でもひときわ明るい。
希美が目を凝らして見ていると、引き戸があるのに気がついた。まるで暗闇の中で一筋の光を見つけたように期待が膨らむ。
そして、ゆっくりと立ち上がって引き戸の方に向かう。
(ずっと座っててもどうしようもないし、とりあえず外に出てみたらどこか分かるかも)
キシキシと音をたてながらゆっくりと戸をあけてみた。
けれどそれは、彼女の希望をより一層無くすものとなった。
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