夜の学校

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とある私立高校、校舎前にて。 「はやくしなきゃ。見つかったらヤバい」  1人の制服姿の少女が、やや焦りながらも慎重に門をよじ登って校内に侵入を試みている。そして1.5メートルはあろう門から飛び降りた。彼女の背中まである焦げ茶色の髪、そして膝が見えるほど短いスカートがふわりとひるがえる。  猫が着地するように体を小さくさせて地面に足をつけた。ゆっくりと立ち上がって校舎を見上げると、一瞬動きが止まる。暗い校舎はいつもと違う感じがして違和感を覚えたのだ。 「こんなところでのろのろしてる場合じゃないのに」  そう言って素早く立ち上がると、何事もなかったように走り出す。そして急いで校舎の裏へまわった。  校舎の裏は小さな山に面していて、草木が生い茂っているせいかじめじめしている。人気もなく、乾いたコンクリートを蹴る彼女の足音しか聞こえない。 (確か体育館横のドアっていつも開いてたはず。いつも開いてるなんて無用心だなぁ。 まぁおかげで助かるわけだけど)  そんなことを考えながら足を進めると、少し奥に入った所で体育館横のドアが見えてきた。ドアと言っても古い引き戸で、開けるときにはキシキシと音をたてている。  少女は周りに誰も居ないことを確認してそっと中に入っていった。
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