夜の学校

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 少女の名前は森山希実(もりやまのぞみ)、高校2年生だ。頭はそれほど良くないが運動神経が抜群で、身軽なのが特徴である。中学校の時のあだ名は『さる女』だったとか……。  そんな彼女がなぜ泥棒のように学校に忍び込んでいるかと言うと、命の次に大事と言っても過言ではない物、携帯電話を学校に忘れたからである。  しかも今日は金曜日。携帯電話無しで土日を過ごすのは、今時の高校生には辛いものだ。そのため親の目を盗んで家をこっそり抜け出し、今まさに学校に居るのである。  ドアからそっと入りあたりを見回す。土足厳禁の貼り紙がうっすら目についたがどうせ誰も見ていないと思い、靴のまま廊下をそろそろと歩いていった。  時刻は7時半を回った頃。足元が暗いので手すりにつかまりながら階段を登る。夜の学校は言葉では表すことが出来ない不気味さが漂っていた。  真っ暗というわけではなく、ほのかに明かりがあるのだ。非常口の案内板などの緑色の光と、非常ベルの赤い光が廊下を照らす。2つの光が混じって余計に不気味さが増しているようだ。  教室は3階の階段のすぐそばだったので、希美はすぐにたどり着いた。
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