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窓から見えた光は南棟の4階……美術室から発せられたものだった。
希美の教室は北棟。南棟へ行くには2階にある渡り廊下を通らなければならない。
はっきり言って階段を下りてから再び上へ行くのは面倒くさい事だ。しかし、今の希美はそれすらも感じることなく美術室まで足早に向かう。
まるで何かに駆られたように……。
気が付いた時にはすでに渡り廊下まで来ていた。今度は、はやる気持ちとはうらはらに、ゆっくりと足を進める。
北棟と南棟を繋ぐ渡り廊下……不気味な程真っ暗だった。ゆっくり、慎重に歩いているにもかかわず、自分の足音が大きく聞こえる。
前後から反響して聞こえる自分の足音は、まるで自分以外の人間が誰かいるような錯覚を見せた。
ためらいながら重い足を前に出す。体は微かに震えていて、恐怖を感じている事は明らかだった。
しかし、それよりも青白い光に対して沸き起こる気持ちの方が強い。
心の中で葛藤しているうちに、後ろを振り返れば北棟は遥か彼方に見える程になってしまった。もう引き返す事は出来ない。
心惹かれるままに足を進めた先には何があるのか?
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