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南棟の校舎は北棟に比べ、いくらか古い。こちらの方が先に建てられたのだからしょうがない。壁の塗料はところどころではげおちている。いかにも何かが出そうだ。
希実は勇気を出してすぐそばの階段を上った。
けれど、別にそんなに勇気を出す必要はない。いつもいる学校なのだから……。
たかが階段を登るのに勇気なんかいらない。いつも何も考えずに上っていた。
けれど、心の奥のほうで感じていた。今日はいつもと違う。
4階まで登って、光の射してきたであろう部屋の前にきた。
南棟の真ん中あたりに位置する美術室。鍵は、あいていた。
ガラガラとドアをあける音だけが響き渡る。つくづくこの学校が無用心だと思いながらも中へ入った。
中には彫刻や絵が色々飾ってあった。けれど、暗闇だからどんなに美しい作品であるかは分からない。
いや、美術の才能のない希美が見たところで価値なんか分からないだろう。
そして美術室の奥へ一歩一歩足を進めていった。しかし、特に気になる物は何も無い。
歩き回るうちに、何気なく美術準備室のドアを開く。
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