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軽いミーティングを終えると、店長が私の所へ来た。
『蘭は送迎使うか?』
『あ…ーはい。お願いします。』
『分かった。じゃ明日からもよろしくなっ。ユキっ!!蘭も送迎だから、連れてってやれよ。』
『はいっ!!』
店長のその言葉にテーブルを拭いていたユキは顔を上げ、店長に笑顔を向けた。
その笑顔が私に向けられた訳じゃない事は分かっているのに、何故か嬉しくなった。
『お疲れぇ』
『またねぇ』
『お先ぃ~』
半分位の女の人たちが帰ると、ユキはまた腕時計に視線を移し、
『よしっ、じゃ送迎組行くぞっ!!』
と、ドアに向かって歩き出した。
女の人たちもユキの後に続き次々とドアへ向かう。
その波に紛れ、私も店を後にした。
外に出ると、少し火照った体には心地良いほどの優しい風が吹き付ける。
だけど、見上げた空はギラギラと眩しいネオンのせいで星一つ見えない。
ユキに視線を向けると、数人の女の人たちに囲まれ歩き出していた。
GUCCI、VUITTON、CHANEL、HERMES…
ユキは、高級ブランド品で固められた夜の蝶達にたかられている、一輪の花の様に見える。
私は自分のバックに視線を移し、少し惨めになった。
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