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まばゆいばかりに輝く銀色の髪と月の光を閉じこめたかのような瞳。通った鼻梁に薔薇色の頬。形の良い深紅の唇。炎を秘めた氷のようなその美貌。溢れでる気品と威厳とがあいまって、神秘的な空気をその身に漂わせている。
聖月宮にいるものであったら誰もが知っている、女神モーリアスその人であった。
モーリアスは硬直して動けないでいる精霊にやさしく微笑みかける。
それだけで、精霊からゆるりと緊張が溶けていく。女神の満月もかくやと思わせる穏やかな笑みに精霊は感嘆の息をつく。
磨いた宝玉のようだと思った。
「ごめんなさい。驚かせてしまった?」
凜と響く声音。
精霊はゆっくりと首を振った。
「どう?準備のほうは間に合いそう?」
「はい。この部屋に花を飾れば終わりですから、十分間に合うと思います」
「そう。なにぶん急なことだったから迷惑をかけてしまったわね。シリウスがもう少し早く知らせてくれればよかったのだけれど」
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