32人が本棚に入れています
本棚に追加
「呼び出してすまない。今日は君たちにどうしても渡したい物があって、恐縮ながら来てもらったんだが……」
迷惑だったかなと聞かれて、ふたりは慌てて首を横に振った。
「とんでもありませんわ。ね、フィリス」
「ええ、光栄です」
シリウスはほっと安堵の笑みを浮かべる。
「それは良かった……」
「それで?わたくしの娘たちに何の贈り物かしら?」
モーリアスはやおら扇を取り出すと、それをばらりと開き、瞳を巧妙に隠した。
聞いていないぞ、と鋭い視線がシリウスを追う。
それを軽く受け流し、太陽の化身は控えさせていた側近に目配せを送った。
「気に入ってもらえると嬉しいのだが……」
側近が取り出したものを受け取ったシリウスはそれをふたりに示して見せた。繊細な銀の鎖に透明感のある水色の石がついたペンダントがふたつ、薄闇の中に輝く。神秘的な輝き。水の雫をかたどった石には、月と太陽の紋章が小さく刻まれている。聖水を結晶化したものかとも思ったのだが、どうやら違うようである。
最初のコメントを投稿しよう!