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「これには言い伝えがあるんだ。この石を持っている限り、ふたりの想いは必ず通じ合うという。その持ち主たちの想いがすれ違っていても正しく導き、道が別たれても必ずひとつの道に導いてくれる。……この石はふたつでひとつなんだそうだ」
モーリアスの瞳が曇り、何か思うところがあるのか扇をきつく握りしめている。
肩が小刻みに震えていたが、きゅっとくちびるを引き結ぶと何事もなかったかのように微笑んだ。それが張りつけられた笑みだということに、集った精霊たちの誰が気づいただろう。
「君たちにはいつまでも仲良くしていてもらいたいからな」
「「……ありがとうございます」」
ふたりの声が見事に重なる。声の調子もぴったりだったから、シリウスは苦笑した。
お節介だったかな、とつぶやきつつも、自らペンダントを姉妹の首にかける。
「どうかふたりの絆が永遠のものでありますように……」
そんなはなむけの言葉を添えて。
その間もモーリアスは静かに微笑んだまま、微動だにしなかった。
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