第一章 2 月の姉妹

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       † 娘たちが退室したあと、側近たちを帰すと、モーリアスはその月色の瞳を見開き、ふいに大粒の涙を零れさせた。 我慢していたせいか、後から後からあふれ出す。 視界が歪み、何が何だか分からなくなって、自分がどこにいるのかさえ分からなくなりそうだった。 ぽろぽろと零れ落ちる透明な雫を隠すようにうつむいて、片手で顔を覆う。 痛い、と思った。 乗り越えられたと思っていたのに、もう平気だと思っていたのに。 そうでなかったことに打ちのめされる。 心の傷の深さを思い知らされたようで、つらい。 覆った指の間から、ぽつぽつと伝う雫が、膝の上で握り締めた片方の手に落ちていく。 痛い、痛い、痛い、痛い、痛い。 心が、締めつけられる――――。 「アサーシャ……」 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。 きつくきつく、唇を噛み締めて。 何度も何度も胸中でつぶやいた。 シリウスはただ何も言わずに佇んでいる。見てみぬ振りをしてくれている。今はそれが何よりもありがたかった。 どんな慰めも、やさしい言葉も、今は欲しくない。 今はただ、思う存分、泣かせて欲しい――――。
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