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顔を叩かれた気がした。それほど強い衝撃を受けた。
シリウスはやはり気づいていたのだ。この身の異変に、気づいていたのだ。
そして自分が何に恐れを抱き、不安を感じているか、見抜いている。
『いつから…気づいて…?』
声は自然震えを帯びる。
『先の満月の夜に。ほんの微かだったけれど人間界に張られた結界に乱れがあった』
それで、気づいたのだという。
『あなたのことだ。ひとりで抱え込んで苦しんでいると思ってね。心配になって来てみたら、案の定。……無理をしているのがすぐに分かった』
『ふ……っ』
涙が再びあふれ出す。
シリウスは自分のために来てくれたのだ。
不安になって、ひとりで震えていた自分のために……。
かなわない、と思った。
なぜここまで思いやってくれるのか。なぜここまでわたくしを解ってくれるのか。
そう言うと、呆れたような声が返ってきた。
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