第一章 3 女神の涙と決意

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『わたしとあなたが出会ったときのことを憶えているか?……いないだろう。つまり、それだけの時が出会ってから流れたということだ。すべてを理解することが出来なくても、考えていることくらい、だいたい想像がつく。わたしのことも少し考えればわかるだろうに』 最後は、苦笑混じりだった。 すっ、と自然に抱きしめてくれる腕があたたかくて、モーリアスは思わずその腕にしがみつき、声を殺して忍び泣いた。 『もう一度言う。ふたりを信じるんだ。どこに過去が繰り返されるという確証がある?そんなもの、どこを探したってありはしない』 なんと的を射た言葉であったろう。 なんと強く響く、言葉であったろう。 そうだ。自分は今まで何に怯え、震えていた? また同じ事が起きると、誰が言った? どこに、そんな――。 くっ、と自嘲にくちびるが歪む。 なんて、わたくしは愚か。 恐れるものなど、始めから何もありはしないというのに。 心に波紋が広がる。それは全身を支配し、モーリアスの心を悲しみの泉から確かに引っ張りあげた。
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