月想恋歌

第一章 3 女神の涙と決意

『自分を責めていないで、自分のなすべきことを考えるんだ。もう、分かっているんだろう？』

まったく、その通りだった。
今は……。
流し尽くしたと思っていた涙が再び零れたときは、正直自分でも驚いたけれど、決して、嫌な涙ではなかった。

『ええ、ええ……わたくしはふたりを信じます。もう、決して過去の幻影に囚われて不安になったりしません』

それは、心からの言葉だった。
それは、己に対する、誓いの言葉だった。
シリウスはひとつ頷くと、会心の笑みを浮かべた。

『それでこそ、月の女神モーリアス』

それに応えたくて、ぎこちなく微笑んでみせる。
涙で顔はくしゃくしゃだったけれど、毅然と顔を上げたモーリアスはいっそ凄絶なほどの美しさを纏(まと)っていた。
強い意志に煌めく瞳。痛みを抱えてなお、それを受け入れようと足掻きながら、闘ってきたものだけが持てる輝きだ――――――。