第一章 3 女神の涙と決意

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       † 「……モーリアス、何かあったときは知らせてくれ。力になろう」 「ええ」 「決してひとりで抱え込まないこと。いくらあなたでも限度というものがあるのだから」 「分かっていますよ。もう」 子供に言って聞かせるような口調に、くすくすと苦笑混じりに答えると、太陽の化身は肩をすくめた。 「だといいが」 不意に月色の瞳が鋭く尖(とが)る。 「それ、どういう意味です?シリウス」 「そうそう。しおらしいあなたも魅力的だが、やはり月の女神はそうでなくては」 「シリウスっ」 と、ぱたぱたと回廊を走る足音がふたつ、慌ただしく聞こえてきた。 「リディア、フィリス」 はあはあと息を切らしたふたりの美姫は美しいドレスを今は脱ぎ、純白の簡素なドレスを纏っていた。 やわらかな材質らしく、風を含んでふわりと揺れる。その拍子にのぞく白い足首に金と銀の鈴を連ねた飾りが見えた。 ふたりの動きに合わせてちりちりと、か弱く澄んだ音色を響かせる。
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