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「シリウス。供の者たちが待ち焦がれているようです。そろそろ……」
その言葉にシリウスはちらりと従者たちを見た。確かにそわそわと落ち着かない。無理もないか、とシリウスは息を吐く。
あまりにも急な出立だったために、聖陽宮を空けるときに配慮すべき不都合をシリウスは全く省みていなかった。
それを皆、危惧しているのだろう。
「待たせてしまってすまない。では、もうそろそろ聖陽宮に帰るとしよう。これ以上皆に迷惑をかけるのは忍びないからな」
「シリウスさま。出立の前にわたくしの弦の音とフィリスの舞を堪能していただきたかったのですけれど……」
苦笑しリディアは続ける。
「今度いらしたときは、必ず」
「ああ、楽しみにするとしよう」
彼女たちの楽と舞がすばらしいのは周知の事実であったから、残念、とシリウスは素直に思った。
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