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「いえ……わたくしは本当に幸せだと、心から思います」
その場に集った面々に戸惑いの色が浮かぶ。
あるものは面くらい、そして照れたように笑う。
またあるものは何を突然、と困惑顔だ。
ただひとり、シリウスだけが晴れやかな笑顔を見せた。
「いまさら、何を言っているんだか」
「シリウスさまの言うとおりですわ、ね?」
「ええ、本当に。今気づいたのなら遅すぎます」
「……その通りね」
くすくすとどこからともなく笑いが起こる。
はらはら、はらはらと穏やかなひかりが降りてきた。
シリウス一行が発ち、控えていた側近の者たちがぱらぱらと散っていくなかで、モーリアスはひとり、その場を動こうとはしなかった。
いつまでもいつまでも聖陽宮へと続く光の道を追うように遥か彼方へ目を凝らす。
それはまるで自ら歩もうとする道を真っ直ぐに見据えているかのようだった。
月色の瞳に決意の、いろ。
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