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――――――月の女神モーリアスさまの力が弱まっている!
その事実は、聖月宮中をまたたくまに駆けめぐった。
砂に浸み込む水のごとく、恐ろしいほどの速さであった。
もうじき夏を迎えようという時期にあまりに不釣り合いな雰囲気が聖月宮を押し包み、精霊たちから生き生きとした生気を奪っている。
それが人界にまで少なからず影響を及ぼしつつあった。
精霊界と人界は表裏一体といっても過言ではないため、精霊界での変事はストレートに人界に伝わり《災い》となって人界を襲うことが、ままある。
そこまではいかないまでも、自然に生気が行き渡っていないのは確かだ。
常なら葉の陰影ひとつひとつさえ輝いて見える時期だというのに、初夏のみずみずしい明るさは、今はどこを探しても見当たらない。
空は厚い雲が覆いつくし、不吉の前兆を思わせた。
自然界のただならぬ気配に、一部の敏感な人間は早くも不安を覚えはじめている。
モーリアスは人界を映す水鏡の前に立ち、こののままではいけないと思案していた。
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