第二章 2 精霊の惑い

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「人界にここまで影響が出るなんて――」 憂いを含んだ瞳でぽつりと零す。 精霊の人界に与える影響力を甘く見すぎたようだ。 話す時期が早すぎたかと考えて、自嘲気味に唇を吊り上げる。 「いつ打ち明けたところで、わたくしに皆の不安を拭い去ることなど……」 できなかったわ。 傷を抱えているのは己だけではない。 側近たちの様子を見て、それを嫌というほど思い知らされた。 「アサーシャ、わたくしたちは……今だ多くの同胞を苦しめている」 痛みを訴える心ごと自分で自分をかき抱いて、か細い吐息とともにつぶやく。 うつむいた拍子に銀の髪がさらりと頬に落ちた。 「わたくしたちの犯した罪は想像以上に、深いのかもしれない――――」 苦しげに押し出される言葉。 見えない心の重圧に屈しそうになる。
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