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けれどここで現実から目を背けて逃げるわけにはいかない。
負けるわけには、いかないのだ。
弱気になっている自分を鼓舞するようにそう何度も繰り返す。
「そうよね、シリウス。自分自身に誓ったもの……」
今自分に必要なのは、苦しみを力に変える強さであろう。
ふいにコンコンと扉をノックする音が耳朶(じだ)を打った。はっ、と表情を引き締める。
瞬間、モーリアスを押し包む女神としての威厳。
「開いているわ」
凛と響く声音から、弱々しさは消えていた。
背筋をぴんと伸ばし、顔は真っ直ぐ前を見据えている。
我ながら素晴らしい化けっぷり……などと妙なところで感心しつつ、こんなことじゃ駄目なんだけれど、という自己嫌悪が胸にせり上がってきた。
誰かに弱味を見せるという事に、自分はかなりの抵抗があるようだ。
『あなたは何でも抱え込みすぎる――』
シリウスの言葉が今更ながら蘇る。
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