第二章 2 精霊の惑い

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まったく、わたくしはどこまで強情なの! そうは思ったものの、長年続けてきた事だからそう簡単に変わるわけがないとも思う。 「失礼します。モーリアスさま、リディアさまとフィリスさまが大広間に参られました」 精霊を振り向きもせずに水鏡と向き合ったまま、小さくうなずく。 「分かりました。すぐに行きます」 これから、娘たちは人界に降りる。 女神は聖月宮の柱となり守護することになる世界を知っておく必要があるのだ。人界をより直に感じることで女神としての責任を知り、同時に人界を護ることに誇りを持つために。 彼女たちにとって重要な意味を持つ儀式をこれから執り行おうというのに、わたくしがしっかりしなくてどうするというの? 扉が閉じるのを待って、頬を軽く叩く。 「しっかりしなければ」 よし、と気合を入れて水鏡から映像を消した。
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