第二章 2 精霊の惑い

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――――――――新しき時を紡ぐ者、汝リディア。 モーリアスの手がリディアにかざされる。ぽうっ、と雪原を思わせる純白の輝きが現れ、リディアを包み込んだ。 ――――――――新しき時を紡ぐ者、汝フィリス。 モーリアスの手が、今度はフィリスにかざされた。そしてやはり、真白い輝きがフィリスの姿を呑み込んでゆく。 固唾を飲んで見守るウィルグの目には、感嘆の色が浮かんでいた。 瞬きすら忘れた視線の先には銀の美貌。 女神の仕草ひとつひとつが、見るものの目を捉えて離さない。 ――――――――月の加護を司る資格を持つものたちよ。一時、汝らの力をここに封印しよう。人となり、その目に映る真実を見つけるのです。 ふ……っとふたりを包んでいた輝きが消え失せる。ウィルグの前に再び姿を現したのは、精霊としての力を封印された、人となんらかわらない乙女であった。
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