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それも、フィリスさまがこの世に誕生されるまでの、儚く短い夢であった。
天はいとも簡単にウィルグの真摯な想いを裏切ってくれたのだ。
あの時ほど、天を憎んだことはない。呪ったことはない。
「所詮天に祈ることしかできない己には、虚しいだけであったな」
小さな小さなつぶやきは誰の耳にも触れることなく床に落ちて散る。
血のつながりのない精霊として生を受けた身で唯一姉妹として育てられ、その先には意にそわぬ争いが待っている。太陽、または月の精霊として生を受け、かつ兄弟姉妹を持ち得た者だけがこの残酷な運命を否応なしに背負わされる。
兄弟姉妹を持つことは、血のつながりのない精霊にとって間違いなく幸せなこと。幸福なこと。だが……すでにウィルグはそう思えなくなっていた。
先に争いの見えた兄弟姉妹に、はじめから幸せなどありえぬのではないか?
意識を遥か彼方へ飛ばしていたウィルグを現実に引き戻したのは、持っていた杯から零れ落ちた聖水の冷たさ。
慌てて居住まいを正した時、モーリアスの声音が、ひときわ甲高(かんだか)く響きわたった。
――――――――汝らの歩む道に祝福あれ!
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