第三章 1 出会い

4/24
前へ
/142ページ
次へ
肩がぶつかってもおかしくない人込みの中、フィリスは風が木々の間を縫うように巧みに進む。ヴェールを押さえ、ひらひらと裾を閃かせながら洗練された動きを見せるフィリスに、すれ違う人々の視線が注がれる。 美貌を隠してはいるものの、持って生まれた気品は隠しようがなかった。 フィリスはまわりの様子など気にもとめず、ひたすら人の流れに沿って歩いた。 出店に立ち並ぶ香水やアクセサリーの数々。おいしそうな食べ物の匂い。人々の活気。それらすべてが新鮮に映る。 (この世界をいつか守護する時がくるのだわ……) そう思うと、深い感慨が込み上げてくる。 「巫女さん、ちょっと見ていかないかい?いいアクセサリーがあるよ」 ふっくらした唇のよく似合う、人のよさそうな女主人が営業スマイルを浮かべて声をかけてくる。 フィリスはふと立ち止まって逡巡した後、好奇心に負けて露天に近づいていった。 「さあさあ見てっておくれ。あんたにはどんなのが似合うかねぇ?顔、見せとくれよ」 困ったように首を傾げ、フィリスはヴェールを抑えてみせる。
/142ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加