32人が本棚に入れています
本棚に追加
「うーん」
腕を組み、女主人はうなると、銀の鈴を連ねたブレスレットを示してみせた。カットされたガラスの留め金が目を引く華奢な作りのものだった。
「これなんかどうだい?純白の衣装に似合うと思うけどねぇ。どれ、手首をかしておくれ」
言われるまま、すっと手首を差し出す。
女主人は眩しそうに目を細めた。
「白い手だねぇ。うらやましいよ」
あかぎれひとつなく折れそうに細い手首をみて、いいところの令嬢だねと見当をつける。
よく見れば、纏っている衣装も上等なものだ。
おおかた屋敷を抜け出しての物見遊山といったところか。
「……ようし、どうだい?」
フィリスが舞うように手首を宙に閃かせると、しゃらん、と澄んだ音を奏でた。その優雅な動きに、いくつかの視線が釘付けになる。
「ありがとう……」
「あ……ああ、気に入ったかい?600ジェイルになるよ」
見惚れていた自分に気づいた女主人は慌てて言葉を紡ぐ。
「600ジェイル?」
「お代だよ。お金」
「オカネ……」
要領を得ないフィリスの反応に女主人の顔が曇る。
「持ってないのかい……?」
最初のコメントを投稿しよう!