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戸惑うようにうなずく。
お金というものを、フィリスは知らなかった。
そう言うと、店主の顔はみるみる険しくなっていった。
「あんた、ねぇ……っ!」
何をふざけているのかと思わず声を荒げた女主人に、フィリスはびくりと肩を震わせる。
何故この女性が怒っているのか分からない。オカネというものを渡せばいいのだろうか?
しかし、そんなもの持っていない。
グズグズしたフィリスの態度に苛立ちを強くし再び女主人が口を開きかけたとき、救いの手を差し伸べてくれたのが椎名であった。
「600ジェイルでしたよね?」
女主人が、なんだ、というように表情を和らげる。
「連れがいたのかい。それならそうと早く言っておくれ」
「すみません。途中ではぐれてしまって」
椎名はそう言うと女主人ににこやかに微笑みかけた。
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