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その稀に見る端正な面立ち。涼しげな榛色の瞳に凛々しい口元。すらりと伸びた恵まれた肢体。その魅惑的な微笑みに、女主人はいっそう相好を崩す。
「おやおやそうだったのかい。この人込みだからねぇ。無理もないだろうさ」
代金を受け取りつつ、チラリとフィリスに視線を投げると、椎名に耳打ちした。
「もう目を離しちゃ駄目だよ。いいとこの令嬢なんだろ?顔を隠しているところから見て相当の美女とみたね」
女の勘でね、と不敵な笑いを浮かべる女主人に椎名は曖昧に言葉を濁す。
「いや、あの……」
椎名の様子に、どうやら図星ととったらしい女主人がカラカラと笑った。
「いいんだよ、いいんだよ。どうせワケありなんだろ?」
ばしばしと背中を叩かれて、ごほっ、と椎名はむせる。
「大切にしてやりなよ」
そういうなり、パンッ、と両手を打ち合わせ女主人は声を張り上げた。
「さあさあ!見てっとくれ!選りすぐりのアクセサリーばかりがそろってるよ!ほら、そこの旦那、奥方にどうだい?」
「……行こうか」
椎名はフィリスの手を取ると、人込みに紛れて歩き出した。
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