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椎名の瞳が驚きに見開かれる。
流れる金髪。澄んだ蒼の瞳。薄く引かれた桃色の唇。薄紅の散った頬。伏目がちの瞳が可憐さを印象づける。
春を具現化したような乙女だと、椎名は思った。
フィリスは慌てて拾い上げ、再び被ろうとすると鋭い静止の声がかかった。
「待って!」
ヴェールを持つ手を押さえられ、身動きが取れなくなってしまう。
「待って……」
手からするりと滑り落ちるヴェールが足元にかかった。
フィリスは茫然とその感触を感じながら、一歩後退する。
青年の自分を見つめる瞳が、怖かった。
何もかもを見透かすような瞳が、怖かった。
(榛色の瞳に、捕らわれる!
)
背を向けて走り出そうとしたフィリスの手をすかさず椎名が掴む。
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