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予想以上に強い力にフィリスは悲鳴をあげた。
「痛っ!」
非難の入り混じった瞳で椎名を睨(ね)めつける。
「待ってください……話を」
椎名はそう言ったが、混乱のただ中にあったフィリスに言葉は届かない。
「離して……」
身体をねじって逃れようとするが、うまくいかない。
それどころかさらにきつく握り締められる。逃がさない、とでもいうように。
「!」
恐怖がフィリスの身体をがんじん絡めに縛り上げた。
フィリスは知る由もなかったが椎名は無意識のうちにやっていた。
否、たとえ分かったところで何の救いにもなりはしなかっただろう。
目に映る、身体が感じる感覚だけが今のフィリスの現実であったから。
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