第三章 1 出会い

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掴まれた手首が痛い。 青年の己を見つめる瞳が怖い。 その現実がさらにフィリスを追い詰め、激しい混乱の荒波に突き落とす。 (なぜ、こんなことになったの!?) 人界のことを、ただ知りたかっただけにのに! 涙が盛り上がり、透明な雫が零れ落ちる。 「離してくださいっ」 さらに激しく抗おうとしたフィリスに焦(じ)れて椎名は叫んだ。 「落ち着いてください。わたしの話を聞いてくださいっ!!」 鋭い一喝にフィリスは思わず立ちすくむ。 一方、椎名は自分自身の上げた声に驚いて、我に返っていた。
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