第三章 1 出会い

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理屈ではなく、そうしなければならないと思った。でないと自分は大切な何かを失ってしまう。大切な何かが手の届かないところに行ってしまう。 《運命》という名の大きなうねり。 椎名は本能としてそれを感じ取ったのだ。 「追いかけないと……」 突き動かされるように、椎名は壁から身を起こす。        † (なんなの!?もう……っ) 唇を噛み締めながら大通りを抜け、舞台の設えられた広場へと出たフィリスは荒い息を鎮めつつ、石造りのベンチに腰をおろした。 色とりどりの花々がそこここに飾られ、美しい灯篭(とうろう)が等間隔につるされている。円形の広場の中心には大きな時計塔がそびえ立っていた。その前に舞台。 通り過ぎる人々を眺めながら、ため息をつく。 フィリスはとにかくひとりになりたくて、それらしい場所を探すことにした。 冷たいベンチから立ち上がり一通り見渡すと、広場の横に木立が見えた。近づいてみると、どうやらそれなりの奥行きがあるらしい。 暗がりに目を凝らしてみても、人がいる気配は感じられなかった。 (ここなら……) フィリスはなるべく目立たないように木立の狭間へと分け入り、喧騒から離れたところでほっ、と息をつく。
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