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木にもたれかかり、フィリスはその様子をずっと眺めていた。それだけで楽しかった。どんな杞憂も吹き飛ばす活気に溢れた場所に身をおいていると、元気がわいてくる。
どれだけ経ったころだっただろう?
目の前で繰り広げられる世界に魅了され、時間の感覚がすでに麻痺していた。だから突然声をかけられたときも、すぐに反応できなかった。
「ここにいたんですね」
「――――え?」
ヴェールの下で、フィリスは思わずあっと声を上げそうになっていた。
飛び込んでくる榛色の瞳。
フィリスは無意識に踵を返そうとして失敗してしまう。あまりに急なことに身体がついていかなかった。
我に返ったときには、すでに視界が傾いていた。
「あっ!」
フィリスは瞳を閉じ、これから来るであろう衝撃に身を固くした。だがいつまでたっても衝撃は訪れず、代わりにどこかほっとしたような声音が降りてくる。
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