第三章 1 出会い

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椎名の期待に満ちた眼差しがフィリスの心を追い詰めていく。 偽名を名告るべきだと理性はささやきかけた。 だが――――。 「フィリス、と」 口を突いて出たのは、真実の名。 人の名では決してありえない響き。 「え?」 何故だろう、椎名には真の名を知っていてほしかった。 フィリスの手が微かに震えていることに気づき、椎名はそっと力を込める。 とくん、とふたつの心臓が脈を打つ。 ――――――この手を、離したくはない。 焼けつくようにそう願う自身の心が信じられなかった。
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